向精神薬

■向精神薬の分類

向精神薬
精神機能に選択的に影響を与え、他の中枢機能には大きな影響を与えない薬物。


分類
  1. 抗精神病薬統合失調症に適応)
  2. 抗不安薬神経症・心身症に適応)
  3. 抗繰病薬躁病に適応)
  4. 抗うつ薬うつ病に適応)


抗精神病薬(メジャートランキライザー)



フェノチアジン誘導体
ジメチルアミノプロピル系
クロルプルマジン(コントミン、ウィンタミン)
レボメプロマジン(ヒルナミン、レボトミン)

ピペラジン系
トリフロペラジン
ペルフェナジン(ピーゼットシー、トリオミン)
フルフェナジン(フルメジン)

ピペリジン系
チオリダジン(メレリル)

ピペラジン系は抗精神作用の力価が強く、錐体外路症状が出やすいが、鎮静作用は弱い

ピペリジン系は抗精神作用の力価が低く、錐体外路 症状も弱いが、鎮静作用は弱い。

ジメチルアミノプロピル系は両者の中間。


●クロルプロマジン

抗精神作用
主に陽性症状を改善。効果は連用によって徐々に発現。

鎮静作用
精神的興奮状態を顕著に抑制。
周囲の刺激に対して無関心となり、傾眠状態となる。
作用は急速に現れるが、比較的早期に耐性が発現する。

錐体外路症状誘発作用
パーキンソン様症状
急性ジストニア
アカシジア
長期投与によって難治性の遅発性ジスキネジア(顎・口唇・舌などの不随意運動)が発現。

制吐作用
アポモルヒネなどの催吐作用によく拮抗

α1アドレナリン受容体遮断作用

起立性低血圧

高プロラクチン血症や乳漏症

*アルコール・催眠薬・麻薬性鎮痛薬・麻酔薬・降圧約・抗コリン薬・抗ヒスタミン薬などの作用を増強するが、連用によって依存は起きない。
チオキサンテン誘導体 クロルプロチキセン

チオキキセン

フルペンチキソール
作用はクロルプロマジンに類似。
ブチロフェノン誘導体 クロルプロチキセン 抗精神病作用が強力で、特に陽性症状に有効。
錐体外路症状の発現も強く、制吐作用も強い。
自律神経作用の発現も少ない。
ドロペリドール
NLAに用いられる(全身麻酔薬の項参照)
ベンズアミド誘導体 スルピリド(ドグマチール・ミラドール)

スルトプリド(バルネチール)

ネモナプリド(エミレース)
脳内への移行が悪いので、抗精神病薬としての力価は低い。

制吐作用や胃腸運動促進作用がよく現れ、胃腸機能調節役として汎用されている。

抗うつ作用も認められるが、鎮静作用・自律神経作用は弱く、副作用が少ない。
ラウオルフィアアルカロイド レセルピン(アポプリン)

テトラベナジン
アミン枯渇薬。

クロルプロマジンに類似する鎮静作用や抗神経作用が認められるが、効果はクロルプロマジンに劣る。

低血圧を起こす事から高血圧治療薬に用いられていたが、錐体外路症状やうつ症状を起こすので現在は用いられていない。
その他 リスペリドン(リスパダール)

ペロスピロン(リーラン)など
特性が異なるため、非定型抗精神病薬と呼ばれる。
配合剤 クロルプロマジン
プロメタジン
フェノバルビタール
ベゲタミンA・B


*副作用(まとめ)

中枢神経系 錐体外路症状(パーキンソン症候群、アカシジア、急性ジストニア、チハツセイジスキネジア)、眠気、倦怠感、痙攣、脳波異常、認知機能障害、 悪性症候群
循環器系 低血圧、起立性定血圧、心電図変化、突然死
肝・消化器系 口渇、便秘、麻痺性イレウス、肝機能障害
泌尿・生殖器系 月経異常、乳汁分泌、女性化乳房、体重増加、多飲、水中毒
眼症状 眼調節機能障害、眼圧上昇、角膜・水晶体混濁、色素性網膜症
皮膚症状 発疹、日光過敏、色素沈着
血液系 顆粒級減少


■抗不安薬(マイナートランキライザー)



ベンゾジアゼピン系
長時間型
オキサゾラム(セレナール)

メダゼパム(レスミット)

クロルジアゼポキシド(コントール、バランス)

フルジアゼパム(エリスパン)

フルトプラゼパム(レスタス)

中間型
オキサゼパム

アプラゾラム(コンスタン・ソラナックス)
抗不安作用
選択的に不安や緊張を緩和し、抑うつ、興奮、過労などで起こる睡眠障害を改善。
心身症などでみられる自律神経症状を改善。

抗痙攣作用
てんかんの治療に用いられる。

筋弛緩作用
中枢性の筋弛緩。

自律神経反射抑制作用
視床下部の自律神経中枢の刺激によって起こる交感神経興奮反応。血圧上昇。心機能亢進などが抑制。

催眠作用

*麻酔薬・鎮痛効果の増強作用
短時間作用型
クロチアゼパム(リーゼ)

エチゾラム(デパス)

*チエノジアゼピン系


*副作用(まとめ)

中枢神経系 眠気、ふらつき、健忘、奇異反応、依存性
循環器系 低血圧、血栓性静脈炎
肝・消化器系 口渇、便秘、悪心、肝機能障害
泌尿・生殖器系 排尿障害。催奇形性
皮膚症状 発疹
血液系 顆粒級減少、血小板減少


■抗繰病薬



リチウム塩 炭酸リチウム
(リーマス)
投与後薬1週間のラグを置いて効果が現れる。

予防的に投与すると、感情の揺れを抑え、うつ病総の発現も予防される。

副作用として、疲労感、筋無力、言葉が遅い、運動失調、振戦、悪振、嘔吐、下痢、多飲、多尿など多い。



■抗うつ薬



三環系抗うつ薬 イミプラミン
(トフラニール、イミドール)


アミトリプチリン
(トリプタノール、ラントロン)


アモキサピン
(アモキサン)
抗うつ作用
内因性の単極型・双極型いずれのうつ病患者に投与しても2/3の患者にうつ状態の改善が見られる。
効果の発現には2〜3週間かかる。

健常者に投与すると、鎮静作用や抗コリン作用が現れ、不快感や不安感も見られる。


催眠作用
うつ状態の患者の不眠の初期治療に有効。

効果の発現には2〜3週間かかる。

抗コリン作用
口渇・便秘・閉尿・瞳孔調節障害・眼圧亢進


心血管系作用
少量では交感神経刺激様作用、大量ではα1アドレナリン受容体遮断作用。

投与量が多い場合には、アトロピン中毒様の精神症状・痙攣・昏睡・心室細動・心停止などを起こすことがある
四環系抗うつ薬
(第二世代抗うつ薬といわれる)
マブロチリン
(ルジオミール)
選択的にノルエピネフリンの再取り込みを阻害。

セロトニンの取り込みに対する作用はほとんど無く、中等度の抗コリン作用を示すのみ。

抗うつ作用は標準的な三環系抗うつ薬と同等であるが、作用発現は早く、4日前後である。

副作用は三環系抗うつ薬とほぼ同等かやや少ないが、もっとも重篤な副作用は痙攣発作の誘発。
ミアンセリン
(テトラミド)
セロトニン拮抗薬として最初に開発された四環系抗うつ薬であり,H1受容体に対する拮抗作用も強い。

セロトニンやノルエピネフリンの再取り込み阻害作用はほとんど認められない。

イミプラミンと同程度かやや弱い抗うつ作用を持つが、即効性である。

副作用は抗ヒスタミン作用に起因する一時的な鎮静や食欲亢進効果による体重の増加を別にすれば、ほとんど無い。
MA0阻害薬 サフラジン
肝毒性が強い。

>患者がチラミンなどのアミンを含む食品(チョコレート・チーズ・赤ワインなど)を摂取すると。死に至るほどの重篤な副作用を発現するため、使用は制限されている。
他の抗うつ薬が無効な難治性のうつ病に用いられる。

抗うつ作用は投与後1週間で現れ、効果は三環系抗うつ薬より弱いが、多幸感を伴う。

選択的セロトニン阻害薬(SSRI) トラゾドン
(テトラミド)

フルボキサミン
(デプロメール、ルボックス)

パロキセチン
(パキシル)
抗うつ作用は、三環系抗うつ薬と同程度

悪心や嘔吐などの消化器症状や、不眠、不安などの精神症状などがあることから薬物相互作用に注意。
セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI) ミルナシプラン
(トレドミン)
抗コリン作用や心毒性がなく、大量服用でも安全性が高い。


*副作用(まとめ)

中枢神経系 眠気、倦怠感、不眠、不安、せん妄、痙攣、脳波異常、繰転
循環器系 起立性低血圧、頻脈、心電図変化
肝・消化器系 口渇、便秘、悪心、嘔吐、肝機能障害
泌尿・生殖器系 月経異常、乳汁分泌
皮膚症状 発疹
血液系 顆粒級減少



5HT






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