■気分(感情)障害■

【気分障害とは】
気分障害の分類・用語・発症のメカニズムに関してまだ十分な一致を見ていない。
ICD-10では
「抑うつ(不安を伴っても良い)または高揚の方向に向かう気分あるいは感情の変化を基本的な障害とし、通常それに全般的な活動レベルの変化を伴うもの」
と規定されている。


■躁鬱病

【出現頻度】
WHOによる疫学調査によると人口の3〜5%。
日本では約5%前後。
日本では男女差なし。
うつ病の臨床症状はもっぱら自覚症状・主観症状であり、特有な身体所見は見いだされていない。

好発年齢は20代前半と40〜50才代の二つのピークがある。

【病因】
粘着性格
仕事熱心・徹底性・几帳面・正直・強い正義感や義務責任・ごまかしやずぼらができない。

メランコリー型
几帳面・勤勉・誠実・円満な対人関係を維持するための特別な気遣い(テレンバッハ。性格の基本に几帳面があるという考え方)

状況因
粘着性格の人であれば、疲労するような状況にあっても、それに抗してかえって感情が高まって頑張り続け、疲労がますます強まった極限状態で突如として発症する。

メランコリー型の人であれば、秩序性のある日常の状況が大きく変化する事態に遭遇すると、なおいっそうその秩序に固着しようとするが、結局はその秩序を放棄せざるを得ない状況に追い込まれて発症。

躁状態に関して
高揚した爽快気分や思いつき、発送が次々とわいてくる観念奔逸。意欲が亢進して何かせずにはいられない行為心迫を主症状とする。
睡眠をとらずに活動しても疲労感を訴えることは少ないが、時に衰弱状態に陥る。

【症状】

うつ病 繰病
感情の異常 特に理由もなく気分は憂鬱で、すべてが無味乾燥に思える。

感動できない。

何をしてもおもしろくない。

自分は生きていても仕方がないと考える。

周囲で起きている出来事を生き生きと感じられなくなる(離人症)

食欲・性欲減退・体重減少・頭重感・ふらつき・動悸・発汗・便秘など。

*特徴的なのは、精神運動制止(やらなくてはいけないとは思っているが、腰があがらない。)

*抑うつ気分は朝がもっともひどく、午後から夕方になると軽快する(日内変動)。
特に理由もなく気分爽快で自信満々。

自分の思い通りにならないと急に不機嫌になる。

食欲・性欲も亢進し、疲れ知らずにしゃべりまくる。
意欲の異常 精神運動抑止

何をすればいいか思い浮かばないために動作が緩慢になり、ついには動かなくなる(うつ病性昏迷)

多弁・よく動き回り、あれこれ何にでも口を挟み、一時もじっとしていない。

電話をかけまくったり、買い物をしまくり、異性を口説いたり・・というような状態になる。

ひどくなると躁病性興奮に至る。
思考の異常 思考抑止(考えが浮かんでこない)

微小妄想(内容はすべて悲観的。自分の能力や健康、地位、境遇、業績を過少に評価する。)

業罪妄想・貧困妄想・心気妄想(うつ病の三大妄想)

観念奔逸

誇大妄想
睡眠障害 入眠困難

熟眠困難

早朝覚醒
多眠っている暇など内くらいに忙しく立ち回っている。

眠る場合でも早朝覚醒が目立つ


【経過と予後】

ボウルビィの作業仮説
「喪」を愛する対象の喪失によってもたらされ、通常は対象を放棄するように導く心理的プロセス。「悲嘆」は各段階に伴う一連の主観的な状態であると考えた。
第一段階:麻痺
 ↓
第二段階:抗議
 ↓
第三段階:絶望
 ↓
第四段階:離脱

E.キューブラ・ロスの「喪」の作業
ショック
 ↓
死の事実の否認
 ↓
怒り
 ↓
回想と抑うつ
 ↓
死別の受容

【治療】

治療の五本柱
休養
薬物療法
環境調整
精神療法
その他の特殊療法(電気痙攣療法・光線療法)

治療の進め方
第一段階(急性期療法):十分に休養をとり、焦る気持ちにゆとりを持たせる。約2ヶ月間
第二段階(持続的療法):再発を防ぐために重要。半年。
第三段階(維持療法):再発を繰り返している場合。


*精神療法の基本的な心得
  1. 励まさない. (親しい物の善意の激励も本人には精神的に相当重い負担になる)

  2. 学業や仕事を休ませて安静にする。かかわりを持ちすぎない。

  3. 自殺に注意する。自殺しないことを約束する。

  4. 人生に関わる重大な決定は延期する。

  5. 緩解することを協調する。

  6. 特に薬物療法によって早く緩解することを教える。

  7. 抗うつ薬の効果が出るのは時間がかかる。服用を止めるまでも時間がかかる。

  8. 薬物だけでは再発する可能性を示し、認知行動療法的な介入を併用する。

  9. 否定的思考は自分自身を責め、失敗の予感や絶望感を強める。

  10. 軽傷であれば、適度な運動が症状を改善するのに役立つ。

  11. 多量の飲酒や薬物使用はうつ病を惹起したり、悪化させる。







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