解熱鎮痛薬(麻薬性鎮痛薬も含む)・抗炎症薬

炎症



■非ステロイド性抗炎症剤(NSAIDs)

一般に抗炎症作用以外に鎮痛作用・解熱作用を併せ持つ薬物が多い。

1.酸性非ステロイド性抗炎症薬
【作用機序】
シクロオキシゲナーゼの阻害→PGsやTXの生成を阻害
【副作用】
消化性潰瘍の形成
血小板凝集阻害(TX阻害)
子宮運動の抑制・胎児毒性
腎機能障害

【相互作用】
ワルファリンとの併用でワルファリンの作用増強。
ニューキノロン系抗菌薬との併用により痙攣が発現することあり。


*分類
1.サリチル酸誘導体
アスピリン
ジフルニサル

2.ピラゾロン誘導体
フェニルブタゾン

3. インドール酸誘導体
インドメタシン
アセメタシン
など
4. アントラニル酸誘導体
メフェナム酸
フルフェナム酸など

5.フェニル酢酸誘導体
ジクロフェナクなど

6.プロピオン酸誘導体
イブプロフェン
ロキソプロフェン
フルルビプロフェン(フロベン)など

7.オキシカム系
ピロキシカム
テノキシカム


サリチル酸誘導体 アスピリン
(アセチルサリチル酸)
【作用機序】
シクロオキシゲナーゼの不可逆的阻害

【薬理作用】
鎮痛作用
比較的弱く、頭痛・歯痛・関節痛などの軽度または中等度の痛みを緩和

解熱作用
中枢性。発熱時の体温を平常体温まで下げる

抗炎症作用
プロスタグランジン合成抑制による。第3期の炎症には効果なし

抗リウマチ作用

血小板凝集抑制作用

【有害作用】
消化気症状
食欲不振・悪心嘔吐・胃痛など。胃粘膜は胃粘膜保護作用があるPGE2を産生しているが、これを抑制するため

アスピリン喘息
シクロオキシゲナーゼ阻害によりリポキシゲナーゼ系が活性化されロイコトリエン類が産生される

出血傾向

聴力障害
耳鳴り、聴力低下、めまい、ふらつき、歩行失調など

腎障害

Reye症候群
ウィルス疾患に罹患した小児が突然の嘔吐、意識障害、痙攣などの症状を起こし死亡することあり。アスピリンにより似たような症状が出ることがあるため、インフルエンザの際にはアスピリンは使用しない。

ピラゾロン誘導体 フェニルブタゾン
【薬理作用】
強力な抗炎症作用・抗リウマチ作用
鎮痛および解熱作用
アスピリンより弱い。
血漿タンパクと強い結合力を有するため、併用した他のタンパク遊離が起こり、遊離薬物の作用が増強する。

【有害作用】
胃腸障害

血液障害
再生不良性貧血や顆粒球減少

発疹

*現在は臨床的にはあまり用いられない

インドール酸誘導体 インドメタシン
【作用機序】
シクロオキシゲナーゼの阻害

【薬理作用】
鎮痛作用
強力な鎮痛作用。
慢性関節リウマチ、変形性関節症、腰痛症、痛風発作、術後の疼痛緩和、炎症性疼痛の緩和などには内服・座剤で用いられる。
軟膏やクリームは腱鞘炎、筋肉痛、外傷後の炎症・疼痛などにも用いる。

解熱作用
アスピリンよりも強力な作用を持つが、副作用も強いため解熱目的にはあまり用いられない。

【有害作用】
消化器症状
消化性潰瘍がある患者には禁忌

血液障害
再生不良性貧血や顆粒球減少症など

肝障害

頭痛、めまいなど


*アセメタシン
インドメタシンの プロドラッグ。
胃腸障害などは非常に軽減しており、作用持続時間も長くなっている。
アントラニル酸誘導体 メフェナム酸(ポンタール)
【作用機序】
シクロオキシゲナーゼの阻害

【薬理作用】
抗炎症作用・鎮痛作用・解熱作用
特に鎮痛作用が強い。
術後や外傷後の炎症、腫脹の緩解、変形性関節症、腰痛症、副鼻腔炎、歯痛、急性気道観戦用などに用いる。

【有害作用】
消化器症状
消化性潰瘍がある患者には禁忌

血液障害
溶血性貧血など

頭痛、めまいなど

フェニル酢酸酸誘導体 ジクロフェナクナトリウム
(ボルタレン)
【作用機序】
シクロオキシゲナーゼの阻害

【薬理作用】
抗炎症作用・鎮痛作用・解熱作用
インドメタシンと同等、あるいはそれ以上の作用を持つ。
リウマチ生疾患によく用いる。
変形性関節症、腰痛症、神経痛、術後や抜歯後の抗炎症および鎮痛に、内服、座剤、頓用として用いる。

【有害作用】
消化性潰瘍

肝障害

過敏症

*消化性潰瘍・重篤な肝障害・アスピリン喘息、本剤に過敏症のある患者には禁忌。

プロピオン酸酸誘導体 イブプロフェン
(ブルフェン)
【作用機序】
シクロオキシゲナーゼの阻害

リソソームの膜安定化作用

【薬理作用】
抗炎症作用・鎮痛作用・解熱作用
アスピリンよりも作用は強い。抗炎症作用はインドメタシンよりも弱い。
作用発現は早い。
経口で慢性関節リウマチ、神経痛、腰痛、上気道炎、術後の抗炎や鎮痛に、また座剤で小児の急性上気道感染などに用いる。

【有害作用】
血液障害

肝障害

過敏症

*胎盤通過性と母乳への移行がある。

ロキソプロフェン
(ロキソニン)
【薬理作用】
抗炎症作用・鎮痛作用
プロドラッグ(胃腸障害が少ない)
慢性関節リウマチ、変形性関節症、腰痛症、術後、外傷および抜歯後の抗炎症や鎮痛に用いる。
現在よく用いられている酸性非ステロイド性鎮痛剤の一つ。

【有害作用】:比較的少ない
腹痛

過敏症状

ショック

*母乳への移行がある。

*ニューキノロン系抗菌薬のエノキサシンとの併用で、痙攣を起こすことあり。
オキシカム系 ピロキシカム
【薬理作用】
抗炎症作用
インドメタシンと同等
半減期が長く、有効血中濃度が維持できるため、一日一回の内服で効果がある。
内服、座剤で慢性関節リウマチ、変形性関節症、腰痛症、術後、抜歯後および外傷後の抗炎症や鎮痛に用いる。

【有害作用】
胃腸障害
血液障害

肝障害

まれに発疹、掻痒感、浮腫

*母乳への移行がある。

*消化性潰瘍、重篤な血液疾患、心機能不全、アスピリン喘息の患者には禁忌。


2.塩基性非ステロイド性鎮痛薬
酸性の物と比べてシクロオキシゲナーゼ阻害作用はほとんどないので、胃腸障害は少ない。

一般に抗炎症作用と鎮痛作用を持つが、解熱作用は弱く、抗リウマチ作用はみられない。

血漿タンパクとの結合力が弱いので、他の薬物との相互作用が現れにくい。

チアラミド(ソランタール)など。


2.鎮痛解熱薬(鎮痛下年津約や強いが抗炎症作用が弱い薬物)

アニリン誘導体 アセトアミノフェン
フェナセチン
【薬理作用】
解熱鎮痛作用はアスピリンと同程度であるが、抗炎症および抗リウマチ作用は弱いか、またはない。

尿酸排泄促進作用もない。

*アセトアミノフェンはフェナセチンのプロドラッグ。

薬物代謝酵素の誘導を来す

【副作用】
アレルギー反応(発疹・発熱など)

中枢神経症状(頭痛・不眠・振戦など)

肝障害

フェナセチンには大量慢性投与時のメトヘモグロビン血症・溶血性貧血・腎障害

ピラゾロン誘導体 アンチピリン
アミノピリン
スルピリン
【薬理作用】
鎮痛解熱作用はアスピリンより強いが、抗炎症・抗リウマチ作用および尿酸排泄促進作用は弱い。

バルビツール酸誘導体と併用すると、鎮痛解熱作用は増強。

【副作用】
ピリン疹(アレルギー反応)

悪心嘔吐・めまい・頭痛・浮腫(アンチピリンに多い)

顆粒球減少症(アミノピリン。現在はほとんど使われない)









Back   Menu    Next