薬理学総論

■薬理学とは

生体に薬物を投与したときに、生体がどのように反応するかを研究する学問

■薬理作用

直接作用(一次作用)
薬物が特定の細胞や臓器に作用してそこで現れる作用。
間接作用(二次作用)
一次作用によっての結果、次に起こってくる作用。

局所作用
生体に適用した部位に限局して作用する。
全身作用
局所に適用しても、あるいは経口投与しても、吸収されて循環系を通してほかの場所に運ばれて現れる作用。

選択作用
全身作用であっても特定の細胞・組織・系統にしか作用しないもの。

主作用
ある薬物のもつ作用のうち、そのときの治療の目的にかなった作用。
副作用
主作用以外のもの。現在では、有害作用とか不利益な反応、望ましくない反応という場合もある。

*二種類の薬物を投与したとき
相加作用
その効果がそれぞれの効果の和になる。
相乗作用
それぞれの効果の和以上の効果が得られる場合。
拮抗作用
併用により効果が減少する。

薬物の作用機序


■作用薬と拮抗薬

作用薬
レセプターや生体の特定の部位に結合して細胞の性質に変化をもたらす物質。

拮抗薬
作用薬の働きを抑制するもの。またその作用を拮抗作用という。

*拮抗作用の分類
化学的拮抗作用
レセプターとは無関係に拮抗薬が作用薬と直接結合して作用薬の薬理作用を消失させるもの。

機能的拮抗作用
二つの作用薬が別々の部位に作用して逆の効果を出すもの。

競合的拮抗作用
同じレセプターを作用薬と拮抗薬が競り合って拮抗する。

可逆的拮抗作用
作用薬と同じ部位に結合する。(濃度が高い方がレセプターと結合する数が多くなるので、作用薬を大量に投与すると拮抗作用は打ち消されてしまう。)

不可逆的拮抗作用
拮抗薬とレセプターの結合は共有結合であるために離れにくく、拮抗作用は長時間続く。

非競合的拮抗作用
作用薬が働くレセプターより先の過程のいずれかに作用して作用薬の効果を消失させるもの。

■新薬の開発過程

開発目標の設定
  ↓
合成品または天然物の研究
  ↓
スクリーニングテスト
  ↓
前臨床試験(動物試験)
  ↓
臨床試験
  ↓ 第1相〜第3相臨床試験
認可・発売
  ↓ 第4相臨床試験
再評価

臨床試験 人数 被験者 目的
第1相 少数 健康成人男子 安全性・薬物動態
第2相 少数〜数十名 患者 安全性・有効性・薬物動態
第3相 多数 患者 有効性
第4相 多数 患者 長期有用性


*二重盲検法
薬物の効果を判定する場合、投与する薬物がわかっていると有効性の判定に先入観が入りやすくなってくる。これをさけるために、あるグループには被検薬を投与し、もう一つのグループには被験薬と形・色・臭い・味など区別出来ず、しかも全く効果のない偽薬(プラシーボ)を投与する事がある。しかも実薬と偽薬を無作為に分け、どちらが投与されるかを被験者にも、投与する医師にも分からないようにして検査することがある。これを二重盲検法という。


<参考>ヘルシンキ宣言
第二次世界大戦中のいわゆる人体実験に対するニュルンベルク裁判に鑑み、世界医師会が1965年に採択し、その後東京とベニスで改訂された、人における臨床試験のあり方について守るべき基本的な倫理概念をアピールしたもの。
 
  1. 実験の内容を十分に説明し、被験者が納得した上で自発的に実験の参加に同意して貰う。(説明と同意:informed consent)
  2. 実験の内容の倫理的、科学的妥当性を第三者的に判断する委員会(倫理委員会)をもうける。

以上の2点を柱としている。






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